野球の試合を撮るとき、みなさんはどんなことを大事に撮影されていますか?
私は「(試合や選手の)ストーリーを感じながら撮る」ことを大事にしています。
ライフワークで撮影した写真は【写真だけ見せる】より【試合展開に沿って文章を添えながら見せる】ことが多いからです。
そしてただプレーをおさめるのではなく「選手の感情にフォーカスしながら」撮り、文章を添える、というのもポイント。写真だけを見てどんな状況だったかを想像してもらうのは難しく、背景を感じていただくために文章を添えること忘れません。
請負の仕事で撮影するときは担当記者や編集部の意向もあるので大事にするポイントが変わることもありますが、どんなときでも試合のストーリーは常に意識しています。
試合のストーリーを意識しながら撮る(作る、という表現の方が近いかもしれません)写真は、試合を観ていない人にもリアルに試合を感じていただけると思うし、選手のことをより知ってもらえるのではないかなと思っています。チームや選手を知れば知るほど興味もわき、応援したくなるものです。
私情も多めですが個人メディアの記事ですので「私はこう見ていた」でいいんだ、と気にせず書いています。現場で感じた気持ちを1番大切にしたいです。
誰が打って誰が投げて何点取ったとか、そういうことはもちろん試合を語るうえで大事なことですが、それ以上に【そのとき選手がどんな気持ちだったのか】【このプレーの背景に実はこういうことがあった】そういう目には見えないものまで想像を巡らせて狙いを定めています。
勝った方だけでなく負けた方にもしっかり目を配ります。
いいプレーばかりではなく、よくなかったことにも目をそらさずに残すことで記事はより立体的になっていくように感じます。
いいときばかりではありません。
私は喜びの感情よりも悔しさやもどかしさに惹かれるということ。その悔しさを乗り越えた、次を楽しみに見守りたい。
「あの時の、あのプレーがあったから」
その試合だけを見るのではなく、前後の試合も、その前の年もストーリーを知っていると写真に深みが出ます。こうして私は6年かけて社会人軟式野球という世界を撮り続けてきました。
先程少し触れた、請負の仕事で撮るとき(高校野球)もそうです。自分の記事なら好きなだけ写真を使えますが、雑誌ですと1試合で使う写真はあっても1枚、という世界です。それでも試合のハイライトはストーリーを感じながら狙いを定めることで明確に表現できる、と思っています。
試合のストーリーをしっかり感じながら撮っていないと「ただの記録」になりがちです。記録でいい時もありますが、1枚で魅せるには「記録+α」のαの部分に写真の個性が出てくるのではと考えます。
ストーリーを感じながら撮るのは非常に集中力を使いますし、考えることも多く、視野も広く持っていないといけません。スコアを付けることもかかせません。スコアをつける重要性に関してはまた別途書くとして、試合を振り返るときにスコアを見れば写真がより活きてきます。打った投げたの記録だけならいりません。ただ私は試合のストーリーを書き残すために、スコアがなくては難しいのです。
私の記事(試合ルポ)を読んでくださった方がどんな感想をもってくださっているかはわかりません。読み飛ばして写真だけ見ている可能性も高いかもしれませんが、それでもかまいません。私が現場で見て感じたこと、選手の息づかいを残したいからこのスタイルで書いているだけです。好きなように読んでもらって全然オッケーです。
ひとりでも私の試合ルポを見て、ストーリーを感じながら撮ることの難しさ、大変さ、素晴らしさが伝わっていたらこんなにうれしいことはありません。
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