人の写真を見ることの大切さ

人の写真を見ることの大切さ

日本橋三越本店で開催されていた、第63回2022年報道写真展に行ってきました。

撮影OKでしたので、気になった写真を勉強のために撮影。
私も報道に携わる身として、学びと気づきがたくさんあったので自分なりの考察を書きたいと思います。

「どんな写真が新聞や雑誌で使われているのか、人が撮ったものをたくさん見ろ」

カメラマンを始めたころ、師匠に言われた言葉です。
今でも大切にしています。

考察は全て個人的な見方です。
素晴らしい写真ばかりだったし、プリントで見る写真というのはまた格別でした。
何かこの記事を読んでくださった方にも届けばいいなと思います。

気になった写真を深掘り(あくまでも推測)

いきなり大スターのピンナップ

入ってすぐに羽生選手のコーナー

ピンナップは日替わりなんだそうです。
この1枚を撮るまでかなり待ちました。さすがの人気。
毎日訪れたファンの方もいただろうなー。

寄り引き、喜怒哀楽が見事な組写真

個人的にはスポーツ写真に注目しがちなんですが、この組写真は見事だな……と、しばらく眺めてました。
撮るうえで大切にしたいことがたくさん詰まっている。

・寄りのカット
・引きのカット
・感情のあれこれ(この場合は悲しみだけじゃない、希望も)

これらの写真は1枚でも成り立つけれど、5枚あるからいいんだよなって。
組写真はベストショットを集めて作れるものじゃなくて(音楽で言ったら組写真はアルバムで、ベストアルバムとはまた違う)。

圧巻でした。
一番印象に残ってます。スポーツ以外のカットでは。
いや、スポーツ入れても今日はこの組写真が見れてよかったなという満足感でいっぱいでした。

こちらの鈴木誠也選手の組写真もそう。
スコアボードの写真とか、なにげない1枚なんですけど、その他の4枚を引き立たせると同時にこの1枚も光を増すんです。
名脇役、って感じでしょうか。

組写真は奥深い。
写真展、やりたくなりました。

写真は光と影で表現するもの

大好きです、この写真。
偶然の力も大きいけれど、この瞬間にピンと来てシャッターを切れるカメラマンの感性が素晴らしい。

あえて余白を大きく取ることでスポットライト感が出ます。
撮るときもただ押すだけじゃなくて撮った先までイメージするっていうのかな。

ため息の出る1枚でした。

どうしても”哀”の表情に惹かれてしまう

ワールドカップの写真ももうパネルになってました!

堂安選手の歓喜の瞬間も素晴らしいけれど、右のコスタリカ戦に目がいってしまいました。

私は長く野球を撮っているけれど、喜びより悔しさ、悲しみを表現するほうが好きというか得意というか。
哀の表情や姿に感情移入してしまうことが多いです。

自身があまり歓喜の瞬間を味わってこず、悔しい思いの方が圧倒的に多かったからなのかもしれません。

歓喜のコスタリカとの対比がまたいいんです。
これも引きの写真。

師匠によく言われました。

「ファインダーの真ん中を見るんじゃない、四隅をしっかり見ろ」

集中するあまり真ん中ばかり見がちでよく怒られてましたが、いまはその意味がわかります。
ファインダーの四隅どころか、ファインダーの外側にまで意識を届かせることが大事だということが。

尊敬するカメラマンさんの作品。ロケハンの大切さ

北京五輪の写真もたくさんありました。

五輪なので「いかに五輪マークを絡ませるか」は重要な要素。
平野選手の高いエアにシンプルな構図で五輪マークがしっかり入る。

「どこでどう撮れば入れ込むことができるのか」
ロケハンをしっかりしていないと難しいです。
超計算された1枚。

私がよくお話しさせていただく、尊敬するカメラマンさんの作品でした。

トリミングもストーリーをよく考えて

先ほどのワールドカップ、コスタリカ戦の吉田選手の1枚もですが、高木選手のガッツポーズもそう。

後ろに写るオランダ(たぶん)の選手を切らない。
これが大事です。
(トリミングしてるか、してないかは定かではありませんが)

望遠レンズにも限界はあるので、作品にする段階でトリミングすることはスポーツ写真であればほぼ必須事項です。

切るときにどうするか、を考えながら余白や背景を計算して撮影する。
それは作品として何を見せたいかというストーリーをしっかり自分の中に持っていることが不可欠かなって思います。

観察する力、気が付く感性

こちらも大好きな1枚。

スポーツ撮っているとどうしても人(主に顔、もしくは全身の動き)に目がいきがちです。
が、この”手”に気が付ける観察力と感性は持っていたい。

野球でもあるんです。
帽子の裏に何か書いてあるなとか、記録員の子が何か言ってるなとか、スタンドの応援団が、とか。

いい意味で集中しぎない、五感をフルに使う。
ただ見えてるものにシャッターを押すだけがカメラマンじゃないってこと。

プレー写真だけじゃない、その前後の表情こそ醍醐味

野球ばかり撮って20年を超えた私ですが、野球の次に好きなスポーツがフィギュアスケートなんです(その次は相撲)。
なのでフィギュアスケートの写真は特に気になります。

今回のスポーツ写真の展示ではプレー写真と同じくらい(それ以上に?)表情を捉えた写真が多かったように感じます。

グラウンド内やオンアイスでのプレーや競技を撮るだけはなく、その前後の選手の表情や息遣いを撮れることこそ、醍醐味だよなーって私は思ってます。

こんなところで私の話を出すのは恐縮ですが、私の作品も表情ものが多いのは、選手の感情が垣間見える瞬間、その瞬間を共有できることが好きだからです。

自分の身に危険を感じてもプロ根性で魅せる

甲子園のカメラマン席ダイブは一種の高校野球名物(?)ですが、これはカメラマンさんのいた位置が最高でしたねー。

とっさにワイド(広角レンズや標準レンズ)に持ち替えて選手を捉える。

これ、めちゃくちゃ怖いんですよ。
打球も選手も迫ってくるんで。

だけどプロです。
さすがです。
無意識で自分とカメラを守ることを優先してしまいますが(おそらく私なら)。

にしても手前のカメラマンさんは無事だったのだろうか……。
そしてよく飛び込めるな、と。
選手がすごすぎます!

目線と余白と

ローアングルでかつ床を大きく取った構図。
うなりました。

目線を下げたり、被写体を中央からずらしたり。

様々な会見(謝罪のみならず、引退会見など)での写真は日常でも拝見しますが、ここでもストーリーやその場に立ったカメラマンにしかわからない空気感がありますよね。

会場の空気感がドン!と伝わってくる1枚は圧倒されます。

最近ですと、浅田真央選手の引退会見での写真が印象的でした。
後ろ向いて涙ぬぐうシーンとか。

会見は撮る場所の制約がかなりありますが、その中でどう見せるかは腕の見せ所だなと。

この1枚は目線と余白の撮り方が素晴らしく。
伸びる影もいいです。

逆光こそドラマティック

逆光は被写体が陰るので撮りにくく敬遠されることも多いですが、撮るときの設定でいくらでも回避できます。

悪条件よりも、被写体を浮かび上がらせてドラマティックに見せてくれる逆光の素晴らしさが上回ります。

たまたま逆光の写真が並んでいて。

アーティスティックスイミングの乾選手は指の先まで美しい。
投手がロジンを触るところは幻想的になるので、私もつい撮ってしまう場面のひとつ。

これらの写真は順光だったらおそらく展示されてないでしょう。
そもそも順光だと作れない写真。

夏場の逆光は死ぬほど暑いですが、こんなにドラマティックなら暑さも忘れて夢中になります。

今回の展示の”顔”

令和の怪物。

よく見られる投球写真の一部なんですが、佐々木投手のように手足が長いと、振り上げた時にファインダーからはみ出す可能性が高いんです。

私も高校時代の佐々木投手を何度か撮影したことがあります。
普通の投手と同じように撮ると確実に手足が切れます。

勇気を持って引き気味に撮ることが大切です。

なぜ勇気がいるのか。
被写体が小さいと写真に迫力が出ないからです。
だからなるべく、可能な限り大きく撮りたい。

最近の球場は広いので、ネット裏から投手を撮るとだいたいはゆとりのある余白になるので、レンズにもよりますがそうそうはみ出ることはないですけどね。

佐々木投手の写真は他にもありました。
完全試合ですもん。
告知ポスター(?)も佐々木投手、天皇陛下、ワールドカップ。
この展示の顔です。
展示初日にはテープカットもされてました。

どこまで伸ばせるか、気になる画質

村上選手の5打席連発。
こういう組み方もかっこいいですねー。
「村神様」だからこそですが。

かなり大きなプリントで(A1?)画質はどんなものかなと思い近くで見てみました。
ここまで伸ばすとかなり荒れてます。

大きなプリントを間近に見ることは少ないので(1枚目の距離感で見るのが普通かな)、これはこれでいいんです。

私は雑誌の仕事が主で、誌面はカラー。
紙質もよいので画質は重要視されます。
新聞の仕事はあまり高画質では撮らない(圧縮してる)ことが多いです。
印刷される紙も紙なので。

それでもここまで伸ばして耐えられるのは、カメラの進化がすごいってことでもあります。
撮影機材も知りたかったなー。

何度も何度もしつこく撮る

泥だらけのユニフォームで打者を抑えて雄たけびを上げる。
タイトルの通りまさに「二刀流の勲章」
素敵なタイトルだなー。

仕事で野球を撮っていると、先発投手の場合、早い回に撮っておくことが多いんですね。
いつ交代するかわからないですから。
アクシデントも考えられます。

大谷選手なのでカメラマンの狙いも次元が違いますが、一度撮ったら終わりじゃないんです。

ユニフォーム汚したら、それも絵になるから撮る。
雄たけび上げるところも何度もしつこく撮る。

カメラマンってしつこいんです(笑)
いや、しつこいくらいがいいんです!

ここでも観察力とストーリーを感じていることとあとは予測の力も必要でした。

いやあ、大谷選手はかっこいい。
先ほどのスポットライトぽい1枚もですが、どこ切り取っても絵になる!

ラスト。これどこでどうやって撮ってるの?!

最後に考察でも何でもない感想ですが(笑)

天井にカメラ席あったのでしょうか(おそらくあったんでしょう)。
これも先ほどのスノーボードの平野選手と同様。

やはりキーは五輪のマーク。

羽生選手と五輪マークしかないリンク。
被写体は小さいのに圧倒的存在感。
その場を支配しているかのような。

こういう1枚は誰でも絵になるわけではないと、私は思います。
羽生選手だからこそ、の1枚。

羽生選手で始まり、羽生選手で締めくくった展示でした。

まとめ:カメラマンさんの思いに触れた1日

会場の様子(一部加工しています)

平日の11時過ぎでしたが、多くのお客様でにぎわっていました。

展示を見に来た人、買い物ついでに寄った人、様々かと思いますが、これだけの展示を無料でかつ、撮影もOKだなんてすごすぎます。

撮影させていただけたことで、気になった写真を記録して持ち帰り、じっくりと向き合うことができました。
自分が撮るときに大切にしていることにも改めて気が付けたので、本当に感謝です。

全て私見で書いてきました。
見る人に寄っていろんな見え方、感情がわいて当然。
撮り手の人は違った意図があるかもしれません。

でもそれでいいんです。

今回の展示は「誰が何を撮ったか」という情報しかありません。
写真説明は添えてありましたが、書ききれなかった撮り手の思いだったり、他にもたくさん見えていたものは必ずあると思います。

だけど、写真は自由に見て、感じていいもの。
たくさんの学びと気づきを得ることができました。

そしてこのあと、もうひとつ展示に足を運んできました。

フジフイルム スクエア(FUJIFILM SQUARE)にて開催される、「2022年 日本雑誌写真記者会写真展」のご案内です。
fujifilmsquare.jp

撮影禁止でしたので何も残っていませんが、雑誌と新聞の撮り方や狙いの違いはやはりあるなーと感じました。

会場外観

私は雑誌の仕事が長いのですが、新聞のカメラマンさんから学ぶことも多いです。

求められるものが違うので、撮り方が違って当然です。
セオリーはあっても正解はない世界。
プラスになりそうなことはどんどん吸収したいと思い、今日は1日写真を見てきました。

まだ不安定な世の中なので外出は極力控えており、展示に出向くのも久しぶり。
写真を見る時間が減っている自覚があり、大変充実した1日になりました。

少し仕事がゆるやかな冬。
忙しいときにはできないことをゆっくりじっくりやっていきたいものです。

日本橋
東京ミッドタウン(六本木)

圧倒的都会に、千葉から来た田舎者丸出しで写真撮ってました(笑)

12月下旬。
1年も終わろうとしてるのに、まだ秋が残っていたり、高い青空は冬そのものだったり、季節の移ろいも感じられて感慨深かった……。

また一段と寒くなってきました。
みなさまもご自愛ください。

かなり長くなりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました!

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