撮影術 – ”自分の思いを形にする”

※サンニッパより記事移行しました※投稿日時は当時のものです 撮影した写真をそのままSNSにアップしたり、友人にプレゼントしていませんか？せっかく頑張って撮影した思い入れのある写真。撮影後にほんのひと手間加えるだけで写真がより素晴らしい「作品」になります。することはたった２つ！ 見せたいものを意識してトリミング水平を整える たったこれだけで見違えます。今回は「トリミング」について、作例も交えて話していきます。 トリミングの必要性 野球を撮る時、被写体（選手）とはかなり距離があります。そのため望遠レンズは長い方がいい！と思われがちですが、そんなことはありません。私のメインレンズは300mmです。現場で周りの新聞や雑誌などのカメラマンさんを見渡してみても一番多いのは400mmです。仕事で撮影していると、様々な場面を押さえる必要があるので、短すぎても長すぎても難しいのです。紙面で何を必要とされるのかわからないので、注目選手から試合内容まで全てを撮影しておかないといけません。打席も投球も守備もベンチも……いろんな場面に対応するためには、300mmや400mmがいちばん取り回しがしやすい、ということだと思います。実際に600mmまである望遠レンズを使ったことがありますが、かえってズームの幅が広すぎて迷うことが多かったです。だいたい300~400mmあたりで撮ることがほとんどでした。メインレンズのほかに70-200mmのズームレンズもサブで持っていたり、今では100-500mmや200-600mmなど、便利なズームレンズがあります。もちろん媒体によってそれらのレンズを常用している方もいらっしゃいます。スポーツ紙や雑誌など、よく目にするスポーツ写真はほぼトリミングしているといいと思います。トリミングは見せたい部分に重きを置いて切ります。新聞や雑誌など紙面のスペースも限られ、写真も大きく使えるとは限りません。被写体を最大限見せるためのひとつの方法です。もちろん、余白を意識した画作りなど、トリミングをしないこともあります。また、トリミングでもあえて余白を残して作ることもあります。新聞雑誌とは違い写真販売の仕事など、撮った全てを納品するような仕事では何百枚もの写真を1枚1枚トリミングすることは不可能に近いです。大きく撮ることに越したことはありません。媒体によりけりですが、トリミングは通常に行われていることなのです。そのため、さらに長いレンズを手に入れなくとも、トリミングを学ぶことで臨場感あふれる素晴らしい作品を生み出すことができます。 トリミングをする際のポイント ファインダーの比率を維持するのか、自由な形に切るのか、は好みでよいと思います。私の場合、仕事では比率は無視（紙面のスペースに限りがあるため）。自分の作品ではのちに展示することなどを考えて3:2の比率を維持してトリミングしています。それはプリントしたときのサイズを一律にするためです。300mmのレンズですと野球では短いことが多いので、撮影時からトリミングすることを想定して画角の中で被写体の位置を決めています。レンズの焦点距離を伸ばす1.4倍や2倍のエクステンダーも併用しています。トリミングの際、最も大事なポイントは「主役（被写体）の何をどう見せたいか」をしっかり決めること。 作例① 見せたいものを大胆に この写真は二塁上でベンチに向かってガッツポーズをしている選手です。元はこういう写真でした。 遠いですね（笑）300mmで撮影しています。これだけトリミングすると画質が崩れることがあるので、元の撮影は画像サイズを大きめ（トリミング前提ならL＝一番大きなサイズを推奨）にします。画像サイズが小さい＝大きく見せることを前提としていないため、切って大きく見せようとすると全体的にガサガサと画質の粗さが見えてしまいます。画質はカメラやレンズによる影響が大きいのですが、今のカメラはどれも質がいいのでエントリーモデルでもある程度のトリミングには耐えられると思います。撮影時の露出（明るさ）やピントが適正であることも、最低限の条件です。ピントの甘い写真はトリミングすると余計に目立ってしまいます。露出（明るさ）を補正した写真も画質に影響を及ぼします。 作例② ストーリーを意識する 作例①の写真、はじめはこのようにトリミングしていました。 意図は「対戦相手がどこか」をわかるように、相手チームの選手も入れ込むこと。さらにベースを入れることで二塁上でガッツポーズしていることが一目でわかります。横位置で撮影したものを縦に切る、というのもよくあることです。「被写体の何をどうみせたいのか」を最優先に、余白のバランスをみてトリミングします。余白は広すぎると被写体が小さくなりますし、狭すぎると窮屈な印象を与えます。ではなぜ、はじめの写真は大胆にトリミングしたのでしょうか。その写真は試合の様子を伝える記事ではなく、最優秀選手賞を獲った選手であることを紹介するために使用したからです。なので、彼の表情や最優秀選手賞にふさわしい活躍がわかるよう、笑顔やガッツポーズに重きをおいてトリミングをしました。1枚の写真でもトリミングだけで様々なストーリーを作り出すことができます。だからと言って私はなんでもかんでも広く撮る（小さく撮る）ことはしません。矛盾しているかもしれませんが、トリミングを前提に撮影すると、迫力に欠け、写真がつまらなくなります。そこのさじ加減は非常に難しいです。主役以外の存在も大切にしたいためにあまり長いレンズを使わない、というのはあります（この辺ものちにお話できればと思います）。今回の写真の例では、撮影の流れの中で二塁ベースが遠く、たまたま被写体が小さくなっただけです。試合展開や撮影意図によってはエクステンダーでレンズの焦点距離を伸ばして、ファインダーからはみ出すことも覚悟で撮ることもあります。自分が被写体（選手）をどう捉え、何を残したいのかでレンズは決めています。もしレンズが短い時にそのような瞬間が訪れても、トリミングでひと手間を加えると、自分の見せたい「作品」を自在に作ることができます。 作例③ 余白を生かす 最後に余白を「あえて残した」トリミングの例を紹介します。 投手が野手に声かけしている場面です。先ほどの写真のように、縦で目いっぱい被写体（選手）に寄ってトリミングするのもありですが、目線の先に野手の存在を感じられるよう、あえて右側に余白を残しました。 元の写真です。撮影時からトリミングした後の状態（彼の目線の先まで残す）を意識し、頭の上と右側に余白を作っています。そうするとトリミングは整える程度で済みます。 おわりに トリミングは写真をよりよく見せるためのひとつの手段であって、撮影時の画作りが一番大切であることは忘れないでいてほしいです。「あとで切ればいい」に頼り切ると、写真の訴える「力」が弱まる気がしています。可能な限り、撮りたい被写体は大きく、トリミングしなくてもいい画作りを心掛けています。撮影時の画作り＝自分が何を残したいのか、をよく考えてレンズを決めます。そして撮って終わりにせずひと手間かけて納得する1枚に仕上げます。今回は「トリミング」の必要性とポイントをお話しました。スマホでもトリミングは簡単にできますので、ぜひひと手間加えてみてください。いろんな方の撮影した写真を見て、撮り手の意図を想像してみるのも楽しいです。トリミングだけでだいぶ記事が長くなってしまいました。もうひとつのポイント「水平を整える」についてはまたの機会に紹介いたします！最後までお読みいただきありがとうございました。これまでの写真からさらにステップアップするヒントになっていれば嬉しいです。 リンク トリミングや水平を整えるなど、写真の編集にはphotoshopを使っています。私はずっとelementsですが、機能は十分です。

写真をよりよく見せる、撮影後のひと手間 ～トリミング～

写真をよりよく見せる、撮影後のひと手間　～トリミング～